木製名刺入れや木製iPhoneケースはHacoaスタッフがひとうひとつ作成しております。
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生まれる時間をたどって

ずっと使い続けたくなる商品たちは、どういうプロセスを経て出来上がってくるのか。ひとつ一つの過程にはつくり手のどんな気持ちが隠されているのか。いつか誰かに育まれる一品が誕生するまでの軌跡をご紹介します。

Way.4「伝統と先進を操るつくり手の現場。」

語り手/製造部長 戸田 肇

工房の傍にいると聞こえてくる音があります。それは、いわば木と製造スタッフの対話みたいなものかもしれません。デザイナーによって描き出されたアイデアを、木との語らいの中で、緻密かつ丁寧な作業によって「かたち」へ仕上げていきます。今回は、商品製作工程の中でも、主な作業をピックアップしてご紹介します。

チーフを中心に商品を製造するスタイル。style

Hacoaでは、愛着を育む木製雑貨を追求しながら、同時にできるだけ多くのお客様へ応えるために、製造工程の仕組みについても常に最善の内容を探求してきました。「伝統技術と先進機械の融合」は、弊社だからこそたどり着いた独自のスタイルといえますね。
効率化を求める工場の流れ作業とは違い、職人的な工房であることが、作る楽しさを追求した独自のスタイルを生み出しています。商品製造の主な流れとしては、まず商品ごとに製造管理者として選ばれたチーフが中心となって、製造を進行するハコア独自のシステムを採用しています(Way.1参照)。現状の在庫を踏まえながら納品日から逆算し、各工程の段取り、作業に必要な人員確保・配置などを決定していきます。スタッフの配置については、それぞれの得意・不得意分野に配慮した適材適所の考え方が欠かせないため、チーフにはスタッフが持つ技量の把握が必要です。誰でも出来るような内容であっても、「慣れるまでに時間がかかること」や「すぐ覚えられること」などに細かく気を配ることが求められます。
それでは、主な工程をご説明していきましょう。

木を活かしながら品質と効率を向上させるプロセス。Process

Process.1:木取り

「木取り」は、製品の良し悪しをも左右する大事な作業です。これから作る製品に合う木材を選び、木目を読んで行くわけです。当たり前ですが、丸太や長板はそのまま木製雑貨に用いることはできません。この後、直角や厚み、垂直、水平を出し、割ったり、面取りしたりと、組み立てまでに数多くの作業を行っていきます。加工にふさわしい部分を1本の木から選ぶわけです。また、柔らか過ぎる部分をはじめ、黒色・白色がかっている箇所やシミの部分を省きながら選別していきます。マグロの解体に例えれば、トロの部分だけ使うようなものです。
この作業には木との綿密な会話が必要となります。この話し合いが的確に行われなければ、材を無駄にし、大きな損をするだけでなく、商品の仕上がり感に大きな影響を与えます。木取りの工程では、材としての善し悪しを見分けるためのスキルが求められると同時に、選ぶ基準を統一する技術も必要となることから、チーフが自ら一人で担当することが多いです。
代表の市橋が入門した頃は、入社後1年以上は木取りをさせて貰えなかったそうです。とても重要な作業を任されていることに、大きな責任を感じながら取り組んでいます。もちろんこの後の工程でも、最終的な美しさへたどり着くために、木と向き合い、繊維の流れを読みながら、多様な作業を行っていく道のりが続きます。

Process.2:NC

NCは「Numerical Control machining」の略。数値制御でコントロールする工作機械での作業を指します。簡単に言えば、加工する図面の内容をプログラム入力し、工作機械によって制御された刃物やドリルなどによる加工が行われる仕組みです。NC加工には、高度な技術を持った職人でも出来ない加工を短時間でバラツキなく均一のクオリティを保ちながら製造できるメリットがあります。ただ、機械に依存できるわけではありません。木材という自然物が対象となるので、プログラム入力を行う際には、反りなどをあらかじめ踏まえて気温や湿度、樹種に合わせた微調整を行うことがポイントとなります。
コンピューターにて制御されたNC加工機は便利ですが、道具のひとつでしかなく、NC加工で完結することは全くないのです。他商品と密接して緻密なサイズ調整が求められる場合(部分)はNC、異なる表情が個性となる場合(部分)は人の手による加工、といったように弊社ではNCと手加工それぞれの強みを生かして使い分けています。磨きや仕上げは全て私達の手で行います。Hacoaの商品に職人的な温もりが残っているのは、私達の想いが込められた手による仕上げを行っているからです。

Process.3:手加工

昇降盤(盤から丸鋸が顔を出した電動工具)を使って行うカッティングなどの作業を指します。「NCでやらないの?」と疑問を持たれる方もいるかもしれませんが、人の手で行ったほうが効率性と精度を高められる場合に、手加工を選びます。例えば「木製iPhoneケース」の側面にある丸みの面取り。NCで造り出した角に対し、刃を斜めに設置した昇降盤を使って削ることで、スピーディー且つ細かく丁寧な仕上がりが望めます。ボタンを押して自動で動いてくれたら本当に楽だと思いますが、このひと手間が製品の良し悪しに大きく関与するのです。
どこまで機械で行い、どこまで人の手を入れるか?現場では常にディスカッションが行われています。
美しく仕上げることと同様に、弊社で重視しているのは安全面です。特に危険を伴う工程である手加工のプロセスにおいては様々な方向から注意を払っています。まず、基本として各機械のメンテナンスを常に実施。また、刃物からできるだけ手を遠ざけるために様々な治具(じぐ)を用意しています。さらには健康管理も危険回避のひとつです。現場では多様な要素を見つめながら安全が図られています。

Process.4:組み立て

成形の完了した材同士を接着材にて貼り合わせる工程です。重箱「ju-baco」やメモブロック「Memo block&tray」など数多くの商品の製造で必要となります。2人組のユニットによって行われ、ヘラを使ってボンドを塗る人と、材を組み合わせてバンドで固定する人に役割を分担して進行。これは相方仕事と呼ばれ、二人の意気が合わないと進まない、本当にストレスを感じる仕事になってしまいます。相方の動きを見て、先を読み相方が仕事をし易いよう気を配りながら進める事が大事な作業です。接着固定した材は、通常1日、短い場合で半日ほど寝かせて作業は終了します。貼り合わせで求められるのは、つなぎ目が見えなくなるほどの高い整合性です。弊社では慣れたスタッフがボンドの量を微調整しながら接着を行っています。バンドの固定についても、ずれないように気を払っています。正しく密着していないと隙間が出来てしまう可能性があります。

Process.5:面取り、仕上げ

最終的な工程として面取りという仕上げを行います。これは、各商品の特性に合わせ、角面を滑らかにする作業です。サンドペーパーや鉋を使い、手で触った際に違和感の無いよう丸めたり、糸面と云われる凛とした仕上げを行ったりします。この作業は、商品の特性を熟知し、センスを持って取り組まないと、最後の最後に商品を駄目にしてしまう可能性をはらむ大事な大事な作業です。地味で手間が掛りますが、商品の良し悪しがこの工程で決まるという緊張感が、コツコツと進めなければいけない作業に充実感をもたらしてくれます。

Process.6:塗装

木材は塗装をする事で発色します。塗装を施す前は艶の無いあせた色合いだった木材が塗装を施すことで、生き生きと潤いに満ちた表情に変わります。塗装を行うメリットは主に3つあります。「木の反りを抑えること」「手垢の付着防止」「耐久性の向上」です。長く愛される商品を提供するために欠かせないプロセスといえます。
Hacoaで採用している塗装方法は主に3つあります。自然植物油を主体にした「オイルフィニッシュ」、ミツバチの巣を構成する蝋から精製される「蜜蝋」、有機溶剤によるウレタン塗装です。これは、商品の特性に合わせて使い分けています。オイルフィニッシュは木材に染み込ませることで木の表面をコーティングします。自然由来の素材がナチュラルな風合いと経年変化を楽しませてくれます。蜜蝋とは「みつ蜂」が作り出した油です。ヌルヌル感は無くサラリとした油分は木材表面において厚みを作り出し、短時間で乾き、保護膜を生成する優れたワックスです。オイルに比べると、染み込まず、表面に膜を作ることで発色が良く、自然な風合いも残した仕上げが期待できます。塗るほどに木の表情が変わるので、メンテナンス作業にはちょっとした感動がありますよ。
有機溶剤によるウレタン塗装は、表面の耐久性を向上させるために水などの染み込みを防ぐ必要のある商品に用います。有機とはいえ、この塗料は、食品管理衛生法の厳しい基準をクリアした、体に害の無い塗料を使用しています。ウレタン塗装の工程では、まず、原液と硬化剤を調合した塗料によって、吸い込みを止める下地塗料作りを行います。塗る時の気候や湿度などで塗料の固さが変わるため、塗料の調合においては、職人の勘が重要となります。調合した塗料はスプレーガンによって霧状に薄く均等な量で吹きかけます。スプレーによる吹きかけは、商品に合わせた霧の噴出量や、吹きかけるスピード、往復回数が求められ、これもまさしく職人の勘にて仕上げられていきます。下地の形成後は木材の内部から噴き出した気体によって表面がザラつきます。このザラつきを削除することで、次の工程で施される上塗り塗料の食い付きが良くするため、商品全体を細かな粒のサンドペーパーで磨き仕上げます。この後、上塗りを下地同様にスプレーガンによって薄く、均等に塗ります。ウレタン塗装のメリットは保護膜として優れており、耐久性を生み出すことです。Hacoaの商品のほとんどはこのウレタン塗装を行っています。ウレタン塗装であっても、艶を抑えた自然な風合いを残す特製の塗料を用いることで、「自然の艶」へのこだわりをかたちにしています。「この商品、塗装してないんですか?」と疑問を持たれるくらいに自然の風合いを保っています。非常に手間を掛けた、二層の厚い膜によるウレタン塗装が商品の品質を大きく向上させているのです。ただ、二層の膜も、使い込む頻度によっては次第に薄れていきます。この場合、蜜蝋を塗り、膜を再生させることで再びメンテナンスの効果が生まれます。塗るほどに木の表情が変わり、メンテナンス作業が楽しめるので、気に入って頂いた商品と長く付き合うためにも、蜜蝋ワックスをメンテナンス材としてご利用頂く事をお勧めしています。

製造の力でアイデアを向上させていく楽しさ。idea

基本的に上記の流れで製造は行われていきますが、商品に合わせて臨機応変に段取りを構築しています。常に進化していることは間違いないです。後の流れを予測しながら逆算して工程を設計するので、想定以上にきっちり進行した際には達成感がありますね。逆に、やってみて初めて新しい方法や手法を発見した時も嬉しさがあります。未体験の樹種の使用など、挑戦してみるとまだ見ぬ可能性と出会えたりするんです。効率だけを求めていたら遭遇できない体験ですね。
また、デザイナーから求められる内容に対して、難題に応えたり、スピードや品質などさらに向上させたりすることができた時には手応えを感じます。現場ならではの感動といえるのではないでしょうか。与えられる仕事をこなすだけでなく、常に学ぶことが求められる日々がとても楽しいです。

★いかがでしたでしょうか。次回は「商品受注」にスポットを当ててご紹介します。ご期待下さい。
⇒ Way.5「受注の人(ひと)手間が、商品を完成させる。」

平林馨(アルバイト・大学4年生)

Hacoaのアルバイト

遮二無二・新人

ガムシャラな表情、壁にぶつかった表情、
腕が上がったことに微笑む表情など。
Hacoaは、がんばる新人のいろんな顔が見られる場所でもあります。日々を一生懸命に積み重ねる彼らの横顔をフォーカス。

「いつかきっと、ここで職人に。」〈後編〉

List.4 HacoaDIRECTSTORE/平林馨(アルバイト・大学4年生)

今年の夏にインターンシップへ参加したそうですね。

お盆明けから3週間にわたって参加させてもらいました。当初は、当然本社で工房の仕事をみっちり手伝わせてもらうことになるのだろうと予測していたのですが、市橋さんから「せっかくだからアートキャンプにも参加したら?今だから、学生の時にしか出来ないことをしたらどうだろうか」とのお計らいを頂いたんです。お言葉に甘えて、昼はHacoaでのインターンシップ、夜は河和田アートキャンプにおいて、民家で合宿しながら活動しました。
河和田アートキャンプとは、2004年に発生した福井豪雨の災害復興支援に端を発した活動です。「芸術が社会に貢献できることは?」をテーマとしながら様々な創作活動が行われています。私は、「蔵BAR」という民家の蔵を改装した居酒屋で営業の手伝いをさせてもらいました。何気なく生まれている地元のコミュニティがとても不思議でしたね。人が集まる場所を創ることで、いろんなことが始まる。「ものづくり」に対する考えの幅が少し広がったように感じました。

Hacoaではどんな体験をしましたか?

いろんな作業を体験させていただきましたよ。ポットスタンド「Quoit」の作成では、サンドペーパーで加工する「磨き」を中心とした作業を手伝わせてもらったのですが、一見簡単なようで、これがなかなか難しいんです。周囲の皆さんにアドバイスを受けながら作業しました。仕上げにつながる大事な工程だと思い、プレッシャーを感じましたね。このほか、什器にLEDを取り付ける作業や、木製iPhoneケースをNCで加工する際の管理などをさせてもらいました。
実際の現場で仕事の流れを見ていて特に感動したのは、時間に対する厳しさを持つ一方で、品質への徹底した追求を欠かさない姿勢です。決められた時間の中で仕事をてきぱきとこなしながらも、一定のレベルに達していない仕事は見逃さない。妥協は許さない。張り詰めた緊張感があるからこそ、凄い商品たちができあがってくるんだなと、あらためて感銘を受けましたよ。本当に貴重な体験がたくさん得られたインターンシップだったと思います。
そして、インターンシップを終え、私はいよいよ市橋さんに就職したい想いを伝えたんです。

どんな返事をもらったのでしょうか。

結果的に言えば、ダメでした。入社希望の考えを、直接、市橋さんに話したのは、インターンシップを終えた後の帰り道。私は「話を聞いてほしいんです」と、ずっと言いたかったのにずっと言い出せなかった想いを切り出しました。「Hacoaで働き、Hacoaでしか学べない技術をしっかりと身に付けたいです。そして、いつかは木工作家になり、自分の工房を持つのが夢です」と。市橋さんは一瞬だけ間をおいて話し始めました。「木工作家になりたいのならば、Hacoaは向いていないかもしれない。うちでは機械を使いこなすことが前提の仕事をしているから、それに慣れてしまうと、将来、一人でものづくりをする際に困るよ」と。続けて、職人が持つべき考え方や技術を養うための環境についても教えてくれました。また、私が真面目過ぎるという話もしてくれました。「良い職人、高い技術を身に付けるには、少しズルくないと駄目なんだ。早く、上手く、楽をするにはどうすれば良いか?と考えることが、実は技術の向上に繋がる。直向きな真面目さでは駄目。HacoaDIRECTSTOREがオープンした時からハコアを支えてくれた恩人のようなスタッフを受け入れても本当の厳しさは教えられない。ちゃんと学生を全うして、内定をもらった会社で世の中の厳しさを教えて貰いなさい。数年後に世の中を知って、厳しさを身に付けて大人になった時に、Hacoaでやりたいと思うのであれば相談にのるよ」と。結果的に入社を断られたことはつらかったですが、私の遠い将来のことまで考えて答えてくれたことに大きなありがたみを感じました。
市橋さんと話をした後、しばらくの間、別の道を歩むことも考えました。でもやっぱりHacoaは諦められないんですよね。そこで僕は、心に決めました。一度社会に出て勉強して、もう一度チャレンジすることを。いつかきっと、ここで職人になりたいです。

⇒ Way.5「受注の人(ひと)手間が、商品を完成させる。」

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