ものづくりで今日を描くハコアの周辺
Hacoaのブランドを包む独特の「空気」を様々な側面から切り取ってお伝えする、この「Haco-air」 つくり手の素顔、商品に込められた想い、伝えられる技についてなどをお届けします
Way.1
つくり手の志をすべての過程に。
語り手/代表 イチハシヒトシ
掲載日/2011年10月
全体を知ることで広がる視野。そして、見えてくる細部があります。このたびHacoaの品が生まれるまでの道のりを伝えるにあたって、まずは全体の流れからご紹介していきたいと思います。
[商品開発] はじめに、問題提起ありき。
Hacoaの商品づくりは、ほとんどが、私達が常に抱く2つの問題提起に始まると言っていいでしょう。その一つが、「便利であっても愛着は育めるのか」ということです。
私は過去に樹脂(プラスチック)成形技師をしていた経歴を持つこともあって、大量生産・大量消費を目的とした商品には特別な思いを抱いています。確かに、高い効率性とそこから生まれる安価は、販売と購入だけを考えればとても魅力的です。
でも、それだけでいいのかなと疑問に思うんです。愛着を置き去りにし、便利さを追求していく事でいずれ機能を感じられなくなっていく商品たち。売る為の商品開発や大量生産の為のかたちづくり。私たちはそこに一石を投じる事が出来ればとおもう。
もう一つの問題提起は、商品ごとの多様性です。どんどん便利な商品が生まれてきている現代、一つの商品が多様な機能を備えている場合が多いです。
しかし、多様な機能を備えることで、商品に本来育まれるべき本質の価値を薄めているんじゃないかと思うんです。使う人が素直に受け取れる感動があるか、ないか。私たちはそこに基準を置きたいです。
やや抽象的なテーマではありますがこの二つの問題提起をベースに、Hacoaの商品開発はスタートします。
[デザイン開発] アイデアを、形にしてみる
「今、これつくると面白いかもね」。たいてい、私達はそんなふうに二つの問題提起と、お客様の声をベースにして生まれたアイデアをそれぞれに投げ掛けます。すると、そのアイデアをもとにデザイナーがスケッチを書き起こしていきます。
ここからがHacoaの面白いところだと思うんですが、普通ならまずスケッチを3DCADなどで図面に落とし込んでいくところですよね? Hacoaのデザイナーたちはいきなり試作品を作り始めるんです。
実際に作ってしまったほうが手っ取り早いだけでなく、細部まで見えてくるのがいいですね。 実際に試作品ができあがると、制作スタッフ全員が集ってディスカッションを実施。利用者にとっての使いやすさ(ユーザビリティ)を大前提に、コンセプトが反映されているか、製造工程に無理がかからないか、どんな人に対して喜ばれるかなどについて話し合いを何度も繰り返していきます。
これがモノがつくれるHacoaの強みでもあるんです。最終的に、納得できた商品に対して価格設定を行い、パッケージや取扱説明書など同梱される他の要素も含めて製造工程に移行します。
[製造量の設定] 求められるものを作り続けるための工夫
商品の販売が決定したら、製造する量が検討されます。ここでまたHacoaらしさが出ます(笑)。
実は商品の製造量は使いたい人=お客様が決めるんです。Hacoaでは毎月1日を「新商品販売の日」と位置づけています。この日に全国のHacoaダイレクトストアでサンプルを展示し、販売を開始します。
お客様に求められる分だけを随時用意していくので、Hacoaには不要在庫は残りません。これは、「売るために作らないといけない」というメーカーならではのリスクを無くします。
また、次の商品開発がスムーズに行える理由にもなっているんです。
[製造] 磨かれた腕がまとめる、磨かれたチーム
初回の製造量が決定したら、さっそく製造工程に移行します。Hacoaでは、商品ごとに製造のチーフが決められ、そのチーフ以外は全員がサポートにまわるシステムを採用しています。
各チーフの仕事は単に商品を作ることに留まりません。その日の在庫を踏まえながら、「製材」「加工」「塗装」「組立」など、製造の段取りやどのポジションに何人のサポートが必要であるかを決定し現場を動かしていきます。
スタッフの担当については適材適所で配置。スタッフは全員が一定以上の技術と知識を持ちあわせていますが、高度な技術が必要となる部分については専門の技術者が担当します。
Hacoaの製造工程の特徴としては、製作図面を作らないことも挙げられるでしょう。その理由は、大きく分けて2つ。一つは、商品を製作していく中で常により良く進化させていくため、確定した図面を作ることができないからです。
もう一つは、図面の数字に頼ることが間違いのもとになるという理由です。もし数字を読み間違えてそのまま量産し続ければ、多量のムダが出ます。
Hacoaのスタッフはサンプルを見て製造する力を身に付けています。製作図面は誰かに外注する際に必要となるものですから、社内で製作を行う私たちには必要ないんです。
[検品] 誇れる高精度を保てているか
商品が出来上がると、全体的な最終検品を行います。各工程においてそのつど検品を行っているので、ここで見つけられるのは本当に細やかな部分です。キズがついていないことなどはもちろんのこと、加工や塗装など高い精度が保たれているかをチェックします。不備のない凛とした表情を確認した上で出荷工程へと回されます。
[商品受注・アフターフォロー] 使う人と商品を、大切に結ぶ
商品受注の工程で大切なことは、可能な限り適切にお客様のご要望に応えることです。在庫の正確な確認は当然のこと、名入れについては、お客様の要望を聞いた上でのイメージデザインを制作し、確認して頂きます。納得をいただいた上で制作へと移行します。
ラッピングでは、メッセージの内容や納期を意識しつつ、贈り手の想いができるだけそのまま届くように直送します。ご購入いただいたお客様に対して、常時メンテナンスのアドバイスを行っています。ワックスの塗り方や保存の方法など、扱い方次第で商品は寿命が延び、愛着もより湧きます。
修理が必要な商品については、状態によって判断させていただき、無償または有償で対応しています。お客様のなかには10年前のP900i専用カスタムジャケット(ケータイカバー)をいまだに修理を繰り返しながら愛用されている方がいるんですよ。
[ウェブサイトでの紹介] 本当の意味での完成
ウェブサイトでは商品の特徴を丁寧に語ります。どういう想いで作ったか、どんな部分に魅力を感じてもらいたいかなど、つくり手の想いやブランドの価値を伝え、共感してもらいます。購入をお考えのお客様にはウェブサイトで伝えられる限りの商品像を伝え、ご購入後の方にはより愛着を膨らませ、楽しんでもらうための世界観づくりを行っています。
私は、商品ができあがっても実は最終ではないと思っています。商品以外のことも含め、お客様の愛着がふくらむお手伝いができてこそ、完成だと考えています。
※各注文方法でサービス内容が異なる場合がございます。