2014年 求められる商品をつくる

丸の内にお店を構えてから、お客様の要望により、様々な需要に応える事で新しいスタイルの商品が生まれた。

直営1号店では、ものづくりをテーマとした施設であった事でものづくりに興味を持った方々がお得意様であった。しかし、丸の内では、観光の方が多く、その中には、木に携るプロの方々が精巧な作りやアイデアに感動してご愛顧戴ける事も多かった。相反して、木にあまり興味の無い、スタイル重視の若者も多かった。

多彩な価値観を持った多くの方々と接する日々の中、様々な要望やスタッフの見解が増えて行く。その声を取りこぼさない為にも、毎日のように売上報告とお客様の声、スタッフの気付きをメールで報告して貰うようにした。

丸の内というビジネスの街で売る商品として、フルウッドの名刺入れ「Hacoa Card Case」を作ったところ、その高級感が受け入れられてとにかく売れた。

フルウッドの名刺入れ「Hacoa Card Case」

フルウッドの木製名刺入れ ステンレスとウォールナットの木製カードケース

フルウッドの名刺入れは、私が東京を彷徨い歩いた頃から営業で使っていた必勝アイテムだった。初対面にて名刺交換の際に木の名刺入れを出すと「その名刺入れいいね」と、先ずは名刺入れで話が弾む。初対面からコミュニケーションが取り易く、営業には大きな武器であった。私が様々な多くの方に出逢い、商売を伸ばせたのもこの名刺入れのお陰だと思っている。

ある日、フルウッドの名刺入れを購入して戴いた若いお客様が返品に来られた。理由は、会社で使っていたら上司から「派手過ぎる。革か金属の名刺入れに変えなさい」と、言われたそうだ。木が好きで、精巧な技術に感動して購入したけれど残念だと言って帰られた。

そのような事が1度や2度では無かった。木の名刺入れがどうして派手なのかは理解出来なかった。木を扱い、木で作れる物を探していた自分にとっては、衝撃な出来事であった。お客様の使用する状況や用途は様々であり、そのような状況にも使える商品を生み出さなくてはという使命感が出て来た。

フルウッドの名刺入れが派手過ぎるという意見を素直に受け入れ、翌年に金属と木を組み合わせた名刺入れ「+LUMBER CARD CASE」を作成した。お客様の声をハコアなりに商品に反映した事で、この名刺入れは、発売から月1,000個以上の販売を続け、ハコアで商品の3本柱になった。

そのようなお客様の声や動向、嗜好を販売スタッフが現場で吸い上げ、全スタッフにメールで伝える事で商品企画やオペレーションの質が高まる事になった。

この丸の内店がオープンする際に、POSレジを導入した事も運営に革新をもたらした。リアルタイムに様々なデータを診る事が出来るようになった事と、日々のデータが蓄積され、あらゆる事が詳しく分析出来るようになった。その中で、20代の若年層の取り込みが無かった事にも気が付いた。

販売スタッフは何となく感じてはいたが、多くのお客様との接客の忙しい日々の中で、データを分析したうえでの根拠を伴った判断に至る事は難しい。数値は曖昧な感覚を明確なものにしてくれるため、判断の根拠にもなる。現場に居なくとも離れた場所でデータ分析を行い、販売スタッフの報告と共に診ながらの商品開発が始まった。


自社店舗を持つ事で、自分達にあった商品開発と店舗の有り方、展開が生まれて来ます。アンテナショップと位置付ける事で効果的なオぺレーションが可能となり、お客様の声が商品に変わり、その商品が支持されるという流れが出来ました。試したい事を自社で自分達の意思にて、素早く行えるのが自社店舗を持つメリットです。

この丸の内店オープンの際には、観光の方々が比較的多く、他のお店では500~1,000円程度のお土産品が多く売れていました。自社ではそのような安価な商品が無かった事もあり、社内で「お土産倶楽部」と名付けたサークルを立ち上げ、低価格の商品開発を進めましたが、結局は自店では売れなかったためサークルは解散となりました。

低価格の薄利多売を目指し、目先の売上アップを追求した結果、自社には合わない事を知りました。そんな失敗が出来るのも自社店舗である事の良さです。失敗を繰り返したくは無いですが、失敗する事で反省と改善の意識がヒット商品を生み出す事に繋がりました。

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