2001年 技術を継承する為に
職人を育て、技術を継承するドリームファクトリーを造る!という夢を見て、最初に作った商品は「Floor Tray」。漆器業界では「運び盆 / 脇取り盆」と呼ばれているお盆を敢えて漆で仕上げずに、現代のライフスタイルに合わせた大きなトレーとしてリ・デザインし、伝統から進化したお盆。
運び盆とは、料亭などでの宴会の際、女中さんが、宴会場にたくさんのお料理を載せて運ぶお盆。多くの料理を載せ、持ち上げるのだからかなり重い。物を載せた際の強度が必要な為か、無骨な形で持ち手には指を入れてかけるだけ。指が痛む。そこで、手のひらで握る事が出来る角度を、縁の傾きで探り、且つ運び易さも考慮。持ち上げる際に指は痛まず、姿勢も良くなるため疲れない。縁の上にも食器が載せられるため見た目以上に料理が運べるお盆として考え、商品化した。
当時は広く洋風の生活スタイルが定着してきて、ホームパーティー等も多く開かれる様になっていた事もあり、現代のスタイルにあったこの運び盆は“機能性が美しさになったトレー”と評判になった。販売を始めてからはデザイン雑貨のセレクトショップからも取り扱いの申し入れが増えた。ネット販売では、個人用としても多くの方に購入して戴いたが、高級ホテルやフレンチレストラン等からも十数枚の単位で注文が入るようになり、折敷に次ぐヒット商品となった。
ただ、製作するのは大変。板が繋がる角度はそれぞれ違うため、角度に0.2度の狂いがあると組み上がらず、強度も出ない。板の反りや切る際の板を抑える力で、微妙に角度が変わる。板が100枚あるならば、100枚の板を決まった角度で正確に切れる熟練の技が必要だった。俄か仕込みの技では作れない品を考えてしまったと後悔した時もあったが、今では入社後数年の若者に技術を伝承していく製品として受け継がれている。
発売から既に20年余り。今でも売れ続けているロングセラー商品は、作り手は技術を継承した若者に変わりましたが、その形や作り方は変わらずに技術の継承をする為の商品となっています。