2014年 森をつくるシスターブランドが誕生
この年、シスターブランドが誕生した。
+LUMBER(プラス・ランバー)というHacoaのセカンドライン。
POSレジのデータを基に分析していると20代の若年層の購入が少なかった。このためいろいろな角度から、その理由を探った。価格の事もあったが、木だけで完結するスタイリングが上級者過ぎるのではないかという意見があった。
Hacoaは、伝統工芸の技術や知恵を用いて、職人達が無垢の板を削り出して技術と素材感を魅せていくブランドであったが、ものづくりの背景は奥深く、上級な捉え方となる。それが伝わりにくく、押し付けがましく捉えられているならば、分かり易い切り口が必要。
10年後の購入顧客を考え、今から若年層を取り込む為にも、若者に木の魅力を感じて貰う。その上でハコアのものづくりに対する想いを知って戴く。上級ブランドとして良いイメージを保持しながら、ハコア入門編を作る事にした。
自然から生まれる木目の美しさだけを強調し、アピールしよう。そんな想いから生まれたのは、ランバー(木の板)を魅せる事。その板の美しさを映し出す為にも無機質な異素材と組み合わせる。木の板をプラスする。それが「+LUMBER(プラス・ランバー)」のコンセプトになった。
若者にも手にして貰えるカジュアルなスタイルにプライス。今の時代の生活やファッションに取り入れて使えるアイテム探しから始まった。スマホカバー、スマホの充電器・パワーバンク、カードケースやペン等のビジネスアイテムにメジャーや時計などの家にひとつはあってもいいよね、といったライフアイテムを中心に身近で使える商品の開発を進めた。
この頃、ハコアの商品は海外からの取引依頼も増えて来ていたが、自然素材という木で作った無垢の商品は気候に左右される事が多かった。薄く挽いた板を組み合わせていた事もあり、乾燥の強い場所では反りや割れも生じる。逆に湿度の高い場所では、膨張し、蓋が閉まらない、緩くなる等の変形が懸念されていた。
しかし、板を異素材と組み合わせ、木目の美しさを魅せる事に徹したスタイルならば、グローバルに販売が出来るとの期待を持った。
販売アイテムを増やすに連れ、日本国内の工場では作れないものばかりとなったため、そうしたアイテムを作る為に適した製造工場を海外に求める事にした。それで価格がカジュアルになれば、お客さんには良い事。工場を探して欲しいと香港の友人に頼んだ。
紹介されたどの工場もHacoaの事を知っており、是非とも協力したい、Hacoaに協力する事で自社のブランディングの手法を学びたい、とも言ってくれた事は驚きだった。まだ海外取引も行っていない無名な頃に、独りで香港の展示会や工場に出向いた時は相手にもされなかったが、この数年の間に欧米の有力紙等に取り上げられた事もあって、海外にも名前が届いていたようだ。
そのような工場は、私達の話を親身になって聞いてくれる。スタイルや作り方、このブランドに掛ける想い等をとことん話合い、高い性能、品質の保証、検品体制の厳格さを実現出来た。毎月のように現地に出向き、何日間も滞在した。木目の美しさを出す為の見解や技術を指導し、何度も検品し、修正を重ねた。加工的に難しく、品質が安定しない商品はハコアの工場で作り組み立てた。
半年以上の苦労を重ね、仕上がった商品は8アイテム。この8アイテムで商品発表をする為の準備を進めていたところ、販売スタッフから物言いが入った。
「私はハコアの職人が作る商品を売りたくて、ハコアに入ったんです。海外で作られた商品を売りたく無いです」と。
このスタッフのハコア愛には感動したが、そこで私から「このブランドは、地球に木を増やすブランドになる。ただ単に使いやすい、便利、かっこいいのスタイルで販売する訳では無く、この+LUMBERの商品を購入したら、地球に木が植えられる仕組みを埋め込み販売する事にしている。
1つの商品を売る事でお客さんと共に地球に木が植えられるんだよ。凄いと思わないか。」と、+LUMBERにはもうひとつの+LOVERプロジェクトと題したコンセプトで、木を増やす意図がある事も伝えた。
これまでは、商品を作る為に木を消費して来ただけだが、木の商品を販売する事で木を増やしたいと何年も前から考えていた。それをこの+LUMBERブランドの立ち上げと共に行いたい。そう伝えるとスタッフは嬉しそうな笑顔になり、発売後には率先して販売を頑張ってくれた。
発表までに8アイテムしか仕上がらなかったため、初年度の売り上げは3千万円程度だろうと予想していたが、蓋を開けてみれば1億4千万円の売り上げとなった。
予想していた金額を遥かに超える4倍以上の売上になったのは、今の時代に合うアイテムの絞り込みやスタイル、ブランドコンセプトが評価されただけでは無く、販売スタッフの“木を増やす”という地球環境に貢献する思いが、売り上げを大きく伸ばし、ブランディングが成功する要因となった。
2014年の+LUMBERブランド立ち上げから、商品売上の一部は、世界約35か国以上の子供達が参加する森づくり運動「子供の森」計画へ商品売上の一部を寄付して来ています。子供達の植林活動への支援は、環境や自然を愛する心を育み、環境問題解決へ向けて子供達が主体的に行動できるように毎年の交流会のプログラムを支援する事で、子供達の笑顔と共に世界へ拡がることが、未来の地球を守ることに繋がると信じています。
この活動を支援する中で、毎年のように現地の子供達には、ハコアのお店に来て貰い、東京のオフィスでワークショップや文化交流を行い、子供達の沢山の笑顔に触れ合って来ました。商品を作る為に木を消費して来たこれまでとは違い、木の商品を販売する事で木を増やしたいという想いを商品に組み込む事で、販売スタッフもこの商品を販売する事が意味ある仕事になります。
それは、スタッフの意識を高め、購入して戴くお客様と共に木を増やすという意識に繋がります。その事でいつの時も感謝を忘れず、感謝する事が身に付き、感謝される仕事をする事で、人としても成長できます。自分独りでは出来ない事も感謝の中で活動する事で、自分だけでは無く、誰かを笑顔に出来ると私は思います。
それが、子供達の笑顔であれば、本当に幸せな支援になっています。SDGsが提唱されているこの時代に合った地球を守る活動が、ものづくりを通して全社スタッフと共に出来ている事も幸せな限りです。