2019年 ハコアビレッジ構想へ

ものづくりの本拠地に木の箱という象徴的なハコアの箱を具現化した後、多くの方々が集う事で、次に実現したい夢が生まれた。

それは、スタッフとの雑談の中で、私が将来的な夢を語った事から始まった。木工だけでは無く、ものづくり全般のものづくりの楽しさを伝えたい。その想いは、これまで全国で様々な仕事をして来た中で生まれた。これまでに様々な仕事に協力してくれた職人達は、素直さの中にも頑固さがあり、自身の知識や行動力が素晴らしい。突発的な問題が起きても自身の経験に基づく揺るぎない自信で解決する姿は、いつもの時も格好良いと感動している。

職人である私でさえも頼りにし、その強さに憧れを感じて来た。職人という職は、未来を視れる楽しい仕事なんだと、多くの若者に伝え、職人を目指すような若者が増える世の中にしたい。子供達が将来なりたい職業にしたい。それが、ものづくり日本の在り方、未来で有って欲しいと語った。

その為にはハコア村というオープンカレッジを作り、同じ価値観を持った人が集い、共感する場所を造る。その共感する人達と共に何かを作り上げ、共鳴する。その場所は心地良い森の中にあり、ゲストハウスがあり、そこに泊まる人達とキャンプファイヤーを囲み、夢を語り合い感動を生み出す場所になる。それが実現出来た時には、私は経営者としては退き、そのハコア村の管理人さんとして再雇用して貰いたいと伝えたところ、「その夢をスタッフの皆に伝えて下さい!」と、スタッフ達に強く要望され、夢が実現へと動き出した。

社長という職業は、夢を語り実現する職業だと思っている。夢と理想は少し違う。夢は実現する為に必要な目的であり、諦めない為の精神的な支えだが、理想は今の現実をどうするかという目標を達成する軸であると考えている。夢を持ち語らないと理想は見えてこない。夢を語れば、その夢を実現する為の協力者が現れる。語らなければ、誰も自分の夢を知る事は無い。協力者も現れる事は無い。想っているだけでは行動には移せない。声を出し、語り、伝える事で独りでは実現出来ない夢が現実のものになると思っている。

私はスタッフに壮大な夢物語を照れながらも語った事でスタッフが私の夢に共感し、一緒に実現したいと言ってくれる。この事で夢に一歩近づけた。更に動き出せば、社内だけでは無く、社外の専門家であったり、経験者が現れる事になるだろう。

私は、ハコアの夢を「ハコアビレッジ構想」と名付け、ビジュアルを創作し、全スタッフの前でプレゼンした。具現化していく為に何が必要か、何が生まれるのか、何を目指すのかが分かるようになって行く中で、自分達の意識が変わって行き、組織としての意識や価値観が高まった。

まずは、東京で共感する人が集い、話を交わす事の出来る場所を造ろうと探していたところ、永代橋が掛かる隅田川の畔に、1965年に建った古いビルを偶然にも見付けた。

そのビルに惚れこみ、運命だと感じた。そのビルのオーナーさんに私の夢を情熱を持って語り、大切なビルをお借り出来た。

その古いビルをハコアのスタイルでリノベーションし、「Hacoa VILLAGE TOKYO」と名付け、ハコアの想い、未来を詰め込んだ。

ハコアビレッジ構想

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オープンのイベントでは、従来のものづくりを現代的に革新し、ビジネスとして成功させた強者の方々を全国からお呼びし、5夜連続でものづくりの未来と職人の喜びを私との対談イベントで開催した。初夜は、中川政七商店の中川会長に檀上して頂き、多くのお客様が来場する中、大いに盛り上がった。一般の方々は有料とし、ものづくりに関心を持って貰おうと、定員の半分は都内の芸大や工業系の大学生を無料で招待した。若者は目を輝かせ、なかなか巡り合わない職人との会話が弾んだ。

5夜連続のオープンイベントの後は、「職人サロン」と題して、月2回の開催にて全国から様々な職人を招いて、対談イベントを重ねた。ガラス吹きの職人さんから始まり、飛騨家具の名工、金網道具の職人、鞄の職人にかまぼこ職人、金工の職人や畳縁の職人、アパレルのデザイナーや植栽デザイナー、漁師やイベントプロデュースと、様々なジャンルで活躍する日本最高の技術を持った方々に職人としての心得や武勇伝を私と共に語り合って戴いた。

それぞれの職人の方々に共通している事は、自分の仕事にプライドを持って仕事に向き合い、生きるか失くすかは自分自身の責任であり、自分の実力次第であるという姿勢だ。語って戴いていると、職人という職が楽しくて仕方が無いのだろうと感じる。本当に職人は幸せな仕事だと改めて感じた。

開催イベントは夜だけに留まらず、日中はワークショップを開催した。その後は、週2回、土曜日の開催を行い、親子連れで予約を戴く方々やお友達を誘って参加して戴き、毎回予約が一杯となった。参加された方々にお話を伺うと、このワークショップに参加する為に新幹線に乗り、奈良、静岡、仙台という遠方から来られたという。本当に驚きで、本当に有難い限りであった。

その他、イベントホールでは、セミナーや会議というビジネスの場を企画し、レンタルスペースとしても提供し、多くの企業さんにご利用いただく事も多くなった。レンタルキッチンも設置している事で、食事会やパーティーも行え、隅田川に面したデッキでのお食事会が行える。風光明媚な背景という事もあり、CMや雑誌の撮影にも利用して戴いている。

このように多様な用途に使って戴ける施設「Hacoa VILLAGE TOKYO」には、様々な方が集ってきてスタッフと共鳴する状況も見られ、ハコアビレッジ構想を現実のものとして拡げて行く事に手応えを感じた。

Hacoa VILLAGE TOKYO


ハコアビレッジ構想は私独りの夢では無く、スタッフとものづくりに関わる人々が集い、語り合う場で生まれる実現可能な夢であると信じています。それは、様々な方々と出逢い、人としての成長を高める事で、ハコアの夢やアイデンティティーを知って貰う事から始まりました。

オープン時から行われた多様なイベントが注目される中、いくつかの地方自治体からも「ハコアビレッジを地元に持って来て貰えないか、それを基にまちづくりが出来ないか」といった話が持ち上がり、業務提携も行った上で、様々な施策が進行しています。この構想には筋書や設計図は無く、様々な方々と共に一から創り上げていくものです。

その都度、羅針盤の針の向く先は変わり、その時々の想いを最大限に膨らませながらものづくりの楽しさや職人の喜びを伝え、ものづくりニッポンを再生していくという夢物語なのです。

こうして「Hacoa VILLAGE TOKYO」がオープンし、この構想が全力で動き出した半年後、新型コロナウィルスの感染拡大により多くの人が集うイベントが出来なくなりました。現在は残念ながら事業自体は中止としていますが、感染拡大が終息した暁には、また多くの方々にご来館して戴けるイベントを再開し、いつの日か必ずハコアの夢を実現したいと思っております。

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