1996年 木地職人としての生業

Hacoaは1500年以上の歴史を持つ越前漆器の産地で木地師の技術を継承してきました。今から59年前の1962年に、伝統工芸士・山口怜示(現会長)が山口木工所を創業。当時は冠婚葬祭や料亭、茶室等の畳間で正座、あぐら座りをして使われる事の多い御膳づくりが主体でした。その事もあって、私達は「御膳大工」と呼ばれていました。

漆器にとって、漆を塗るのがお化粧であれば、木地は骨格です。美しく仕上げる為にも永く使って貰う為には、骨格である木地の仕上がり次第。木材の品質に拘り、適材と言われる桂や銀杏の木を板にして成形していきます。

釘は使わず、接着剤には漆と木の粉に米糊を混ぜて作る昔ながらの接着剤を使用し、鉋やノミを使い、手仕事で作り上げる伝統技法の「堅地」と言われる伝統的な高級漆器の木地づくりが主体で、産地内だけでの生業でありました。

しかし、1996年頃から冠婚葬祭などの生活様式や食文化が大きく変化し、代用品の出現、またレンタルのビジネスが生まれたことで、これまでの伝統的な道具、商品の需要は激減し、産地内の多くの事業所に大きな影響を与え、私達も廃業寸前の危機的な状況となり、追い込まれていく事になります。

私が弟子入りした頃は、「技術を身に付ければ飯が食える」という活況の中でしたが、景気や時代が一転し、激変する世に流されて行きました。産地というのは下請けであり、私達職人は、下請け産地の下請けで、自分達でお金を生み出すにはどうしようも出来ない立ち位置にありました。

未来の見えない仕事を続ける事よりも、伝統という縛りから一度逸脱し、「木でものを作る」 という技術と財産を活かし、時代に合った仕事を創出しようと、自ら東京で売り込みを始めたのが、Hacoaが生まれるきっかけになります

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