2009年 ハコアの商品開発は「感動」
メーカーとして製造直売をする為には、商品バリエーションを増やさなければならない。どのような商品を創り出し、販売するかは、お客様に聞くしかない。
Hacoaの看板を掲げる時に後継者育成と技術の継承を目的とした。その為には息の長い商品を作る必要があり、商品に「普遍的価値」を置いて「ハコアの哲学」を掲げ商品を開発して来たが、時代は急速に変化し、流れて行く。リーマンショックで受けた打撃は大きく、考え方も大きく変える必要があった。
市場が何を求め、市場に投入する商品はどれくらいの価格でどれくらいの原価で作る必要があるのか。市場は何処にあり、どれだけの商品バリエーションでどのような流通経路でどのように投入するのか。
大手や一部上場企業が行っているようなマーケテイングが数人の小さな木工所が出来る訳も無い。私達はやみ雲に藁を掴む思いで、商品を作った。ただ、ひとつ、決めていた事があった。商品にレーザー加工による名入れを行うスペースを作る事。カスタムジャケット、木ーボードやUSBメモリのヒットにより、当時は700万円もする高価なレーザー加工機を購入することが出来た。
このレーザー加工機はプリンターと同じで出力がインクでは無く、光。小学生の理科の実験で虫眼鏡を使い、太陽の光を集め、屈折した光の焦点を紙に当て、焼いた経験があると思う。それと同じ原理でデーターを焼き付けプリントする機械。
主にHacoaのロゴ入れや木ーボードのアルファベットの刻印に使っていただけだったが、この機械を使ったサービスが出来ないか、お客さんが喜んでくれる事は無いかと考えた時に名入れサービスを思いついた。
お客さんが要望する名前やメッセージ、イラストを入れるスペースを商品に必ず設ける事を商品開発の前提とした。
お客さんの想いを商品に入れる事で、お客さんにとって、世の中で唯一無二のオリジナル商品に変わり、愛着が生まれる。
商品はメーカーやブランドの為にあるものでは無く、その商品を見て、感動を共鳴して買って戴くお客様の為にある。贈り物として購入した場合は、購入して戴いたお客様の送り先のお客様の為の商品である。
その理念を持って、商品開発に取り組む事にした。
この名入れサービスを始めた当時は、ブランドを掲げる事はプライドでもあった時代。自身のブランド名と並べて名入れを自身で行うなど、とんでもない。クレイジーだと様々なデザイナーやメーカーから言われたが、そんな事は言っていられなかった。
プライドを掲げ、ブランドを守ってもお客さんには何の得も無い。追い込まれていた私達にも何の得も無い。お客さんが満足し、感動をして貰える。またその先の送りたい人に感動を伝える事が私達の商品だと考える事にした。
商品化をするには様々な事情があると思います。取引先に採用して貰うならば、まずはバイヤーに納得して貰う商品を作り、お客様に届ける前の障壁を越えなければ、最終のお客様に商品は届かない。私達は直売を前提に商品開発を始めた限りは、お客様との間にバイヤーは居ないですし、お客様が求めるモノ、コトを商品にすれば良いと気付きました。
商品に付加価値を付けると良く言われますが、私達の商品力は感動を伝える事。お客さんが何を求めているのかを知る事、満足度の高い商品を考える事を怠ってはいけないが、お客さんに向き合わない商品開発は有り得ないと思います。この商品開発の手法はハコア塾・ハコアの哲学編でお話出来ればと思います。