2020年 ハコア展の開催

東京・六本木のミッドタウン東京の敷地内にある21_21ギャラリーで「ハコア展」を開催した。それは、長年に亘り想いを温めて来たハコア単独での展覧会。2020年1月31日~2月14日までの約15日間の開催で、国内外の延べ1万人の方々にご来場戴けた。

私達は1962年に越前漆器の木地製造工場として創業し、半世紀に渡り漆器の木地だけを製造して来た。様々に変化する世の中で、伝統工芸という産業には多くの課題が積み重なり、先の見通しが見え難くなっていた。

長年培った木地師の技術や知恵を用いて現代のスタイルに合わせた商品を作り、後世に技術を繋ぐ為に2001年に木製生活雑貨ブランド「Hacoa」を立ち上げてから20年を迎えるプレイベント。

 

東京・六本木のミッドタウン東京の敷地内にある21_21ギャラリーで「ハコア展」を開催

この20年近くの成長過程にはスタッフ達と共に歩んだ多くの軌跡がある。その中で、伝統工芸の世界でありながらもハコアはどのように革新し、躍進したのか、ハコアビレッジ構想とはどういうものか、チョコレートをどうして作り始めたのか、と多くの疑問を戴く事が多かった。その疑問を解き明かす展示会を開催して欲しいという声を受けて、このハコア展の開催を実現する事となった。

私はこのハコア展を、これまでに支えて戴いた多くのお客様や友人、スタッフ達への感謝の場にしたいという想いがあった。その為に展示会のコンセプトや運営プログラムはハコアビレッジ構想のスタッフとショップ店長達が企画し、私は会場設計を行う事にした。

何を見て欲しいのか、何を魅せたいのか。来場したお客様にどのように楽しんで貰うのか。やりたい事は尽きない。

東京・六本木のミッドタウン東京の敷地内にある21_21ギャラリーで「ハコア展」を開催 東京・六本木のミッドタウン東京の敷地内にある21_21ギャラリーで「ハコア展」を開催

開催までに3か月しか無い中で、会場の展示物を1から製作していくには時間が無かったが、ハコアの空気感を存分に演出するハコアの箱づくりを見て貰いたいとの想いで取り掛かった。

数日の間で20通り以上の会場設計の案を出し、その中からハコアらしい空気感を演出する1つの案に決めた。それは、ハコアの商品が作られる工場の現場感を演出し、ものづくりの空気感を伝える事。その為に本社職人に展示台などの製作をして貰う事にした。

製造現場は繁忙期に入り、展示台の製作をする隙もないくらいの中で、職人の負担にならない展示の造りを心掛け、現状でのベストを目指した。年明けから製作に入り、出来上がった展示台をトラックに載せ、職人達と東京に向かった。眠らない街、六本木の会場に着いたのは真夜中。会場に展示の資材や商品を運び込み、朝を待った。

翌朝、職人とスタッフの皆んなで一斉に組立、会場づくりを行った。流石は職人集団で、自分達のやるべき仕事を手際よく行い頼もしい限り。私は観ているだけで良かった。20年近くに渡り追い求めて来た理想が目の前で現実のものとなっていて、この風景を眺めているだけで、これまでの苦労が報われるとともに幸せな時間で満たされた。

このハコア展の開催の監修を請け負って戴いたのは、国内外で様々な有名ショップの立ち上げからものづくりに関わるイベント等の企画立案を行っている一流のプロデューサー、山田遊氏(株式会社method代表取締役)。

オープン前夜に行われたプレイベントでは、山田氏と私のディスカッションを行い、木工とチョコレートの関係を語った。そのディスカッションの中での彼からの「ハコアの考え方はアート」との一言が非常に嬉しかった。私は予てより「アート性が高く無ければ感動は生まれない」と考えていたからだ。

これまでにハコアらしい独自のアート性の創造を追求して来た事も有り、山田氏が一流の経験や知識からハコアを見る角度はどのようなものかと緊張していたが、アートだと評価される事は私達に取っては最高の勲章を戴いたようにも感じた。

ディスカッション後も傍聴して戴いていた数人の芸大教授からも独自性とアート性の高さに感動したと伝えられた事も有難かった。多くのお客様に傍聴して頂き、翌日から開催される展覧会への期待感は高まった。

会期が始まると、多くの方々が流れ込むように入場した。普段、お店には立たない職人達がひとつひとつの商品を作る際の苦労話などを話し、商品開発の秘話やハコアのこれまでの歩みを説明する。

職人と話す機会は少ない事もあり、お客様には大いに喜んで貰えたと思う。

ハコア展の開催

お客様と話す事で職人達もスタッフ達も成長していく。そんな関係性がものづくりの本質であり、しあわせな時でもあり、それらがこれからのものづくりの未来を築き上げて行く事になるのだと、私は思う。

会期中は、鉛筆づくりのワークショップも開催した。ウォールナットやチェリーといった銘木の鉛筆は他を探しても無い。それをハコアの職人と一緒に出来るのだから楽しいはず。

現代では鉛筆をどのように作るかを知らない方々が多い。15分程の簡単な作業で、親子で子供と一緒に作る事が出来る。これまでに開催して来た中でも人気のワークショップであり、連日途絶える事の無い申し込みにて、会場は多くの方のものづくりを体験する人で盛り上がった。

鉛筆づくりのワークショップ
ハコア展の開催

またファンミーテングと題したファンとの交流会も開催した。ハコアのスタッフ達が以前から行いたいと熱望していたのは、ハコアが大好きと声を上げて貰える熱狂的なお客様30名との交流イベント。職人やスタッフ達との食事会の中で、ゲームやクイズ形式のプレゼントイベントを3時間に渡って行い、職人のものづくりへの想いや商品開発の秘話を雑談の中で楽しく話せる場だ。

ゲーム等のプレゼントの中には、商品としては出回らない希少な木目を使った品や商品開発の際の試作品等があり、参加したハコアファンの皆様にはとても喜んで戴けた。

さらにはハコアが辿った歴史や商品開発の考え方、ブランドとしての行く先をパネルで紹介したギャラリーやハコアの商品販売とDRYADESチョコレートの販売も行い、多くの方々にお買い物とハコアのアートギャラリーを楽しみ満喫して頂けた2週間となった。


このハコア展の開催により、ものづくりに携わる私達と、ものづくりに共感して貰えるお客様との交流会を実現する事が出来ました。ハコアが目指す「ものづくり、ひとづくり、感動づくり」の理念をスタッフ達が再確認し、「ハコアビレッジ構想」の実現に一歩近づいたイベントになりました。

この開催で得た熱を持って、ハコアビレッジ構想は一気に加速すると確信していました。しかし、この展覧会閉幕の翌日から、新型コロナ感染の危険性が拡がり、私達も集客するイベントの中止を余儀なくされました。

それからの数か月後からは、緊急事態宣言下となり暗く沈んだ世の中になりましたが、この感染拡大が終息し元の世に戻った時には、またどこかでハコア展を開催し、ハコアビレッジ構想の実現に向け再始動したい。
ものづくりから生まれるしあわせ探しはこの先も続きます。

 

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