2015年 余裕が生む力強さ

丸の内店の活況にて、全国のデベロッパーからの出店要請が相次ぐようになり、直営店の全国展開の準備が始まった。

KITTEという商業施設は、1Fから5Fまでが吹き抜けであり、どのフロアの通路からも見通せて、各店の繁盛が一目で分かる。KITTEという商業施設が話題にもなり、東京駅を利用するデベロッパーは必ず視察するのだろう。毎日のように出店依頼を受け、毎週のように商談していた中で、ある人から言われた事。

小売店を持つ事のメリット

ハコアは、他の店舗に比べ、お客さんの滞在時間が相当長い。普通の雑貨屋さんだと、お客さんが入ってから出るまでの滞在時間は3分程度。しかし、ハコアは、平均で15分から20分はある。だから、お客さんが溜まり易く、繁盛しているように見える。と、なるほど。確かにそうだろうと納得した。

加えて、お店の作り込みにも評価を戴いた。温かな雰囲気と素材の持つ優しさがお客さんを長く滞在させるのだろうと言われると、確かにそうだろうと納得する。そのような想いで作ったお店だけに、プロの目で診て、分析の中でそう評価して貰えると只々嬉しい。

お客さんが溜まるお店は商業施設を運営するデベロッパーから視れば魅力的な事。お客さんが溜まる事で、繁盛しているように視える事と、そのお客さんが買い回りを行う事でフロア全体に活気が生まれる。

お客さんを長い時間、滞在させる、そんなお店はそれ程多くは無いようだ。その為、提示される契約の内容は、強く出店して欲しいと感じる程の優遇感が診て取れた。

一等地でお店を構えるには勝ち続けなければならない。そんな強い意志を持って運営して来た事もあり、これまで行って来た事、苦労が報われたように感じた。

自社で小売店を持った事のメリットは大きかった。長年下請け職人であった時はお客さんと直接に話す事も無く、暗黙の中で禁じられていた。それがお店を持つ事で、お客さんの要望が手に取るように分かり、売れる商品づくりを行えるようになり、売り上げは飛躍的に伸びた。

一方で小売店を持つ事のデメリットも当然に生まれる。当時は小売店を持ちながらも、全国の小売店に商品の卸販売も並行していた。そうすると、お店に来るお客さんが「ネットで買った方が安いよね。ネットで買うわ」と、スタッフに伝えて帰る事が多くなってきた。

自社のオンラインショップでは値下げ販売は行っていなかったが、商品を卸した先の店舗同士では熾烈な値切り競争が行われていて、お客さんはそうした状況をちゃんと見ていたのだ。自社の商品が一番高く、売れない事は本末転倒。

小売店を持つ事のメリット

スタッフからは、他への卸販売を止めて欲しいと強く要望があったが、自分がお世話になった方々に対し、「商品をお渡し出来ない」とはなかなか言えない。さらに製造部門からも、卸販売を行う事で会社全体の利益が下がる旨の指摘も受けた。

自社の社員はそこまで気にしてくれているのだと嬉しく思う反面、ビジネスは義理人情で成り立つという思いもあり、全ての業者の方々に卸販売の終了を伝えるまでに何年も掛かった。しかし、自社商品を自社で販売する事に徹した結果として利益は生まれ、資金力が付き、先行投資が進められるようになった。

社員の生活を守り、未来を創る為にもしっかりと利益の出せるビジネスモデルに仕上げる事を社員から要望されたのだ。

丸の内店の成功で全国各地の一等地から声が掛かるようになったが、一等地であるということはそれだけ賃料も高い。当然リスクも高まるため躊躇もするが、製造から販売まで一貫した体制が出来ていた事と、丸の内店での全ての経験がその後の私の背中を押してくれた。

売上をどう作るか、その立地での対応のノウハウも分かって来た事で、全国へお店を出し、挑戦してみたいという想いが強くなっていった。

KITTE丸の内店


自社で小売店を持ったことで資金繰りも楽になりました。それまでは卸売りが大半で掛売が多く、現金化するのに早くて1か月以上、取引の内容によっては、現金化に半年以上も掛かる事がありました。

それが自社で小売店を持つようになると、毎日のように現金が手元に残るのです。掛売残高という売上金が帳簿上に有るのと、現金が手元にあるのとでは、実務上も精神的にも大きく違ってきます。

これまでBtoB取引を柱にしていたときに苦しんでいた資金繰りも安定し、先が見通せるようになりました。そうすると販売計画も見通しが良くなり、製造計画も立てやすくなって効率化も出来ます。原価のコントロールも行えるようになり、明確な事業計画書が作成できるようになります。

つまり商品企画から製造、販売まで一貫して行える事は、「マイペース」を保てるという事なのです。「マイペース」を保てるというのは、「余裕」があるという事。時間にもお金にも人にも余裕がある事は、会社経営の社長さんには理想です。

どんな時にも余裕があればと思うもので、今すぐにも欲しいものです。余裕がある事で、全てを自らの手の内でコントロールしながら事業を行い、結果が残せるようになるとそれが自信に変わり、そして未来への希望に繋がっていきます。

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