2000年 ネット販売の開始

下請けの職人がフリーマーケットで直接にお客さんと関わる事が出来たのは、とても新鮮でとても充実感があったのですが、フリーマーケットは1年に数日間しか開催されない事もあり、普段の収入を確保する為にインターネット販売を始めました。

当時はインターネットが普及始めた頃で、「インターネットでモノが売れるはずがない」と世間で言われていた頃です。電話線でサーバーに繋いで、繋がるまで1分程待つ。ガアガアガアという音の後、回線が繋がり、画像がコツコツと降りてくる画面を辛抱しつつ観ているような時代でした。

そんな環境の中ですから、インターネットでモノを売る事については私も正直なところ半信半疑でした。商品は見て、触って、確かめて買うのが当然という思いがあったのです。しかし物事は、何でもやってみなければ分からない。

その当時、楽天市場のモールが開業し、織田信長が開いた楽市楽座と楽天的な意味合いを持ったネーミングに私は感銘し、商売としての未来を感じて即出店を決めました。オープン当時は「仮想店舗」と言われていた楽天のオンランショッピングモールは、テキストが多く商品の良さなんてとても伝えきれない状況でした。

それでも多くの人に商品を見て貰える、との希望を持って「木香屋」という店名で出店しました。多くのお店は、モールのプログラミングが複雑なことから別の業者へ多額のお金を支払い、それなりに良いホームページ作成を依頼していたようでしたが、私にはそんなお金はありませんでした。

自身でページの製作やプログラミングを行う以外なかったのですが、幸いにして学生時代に情報処理の資格を取得し、その後も成形技師をしていた事もあってPC操作は得意な方だったのです。さらにデザインを学んだ事がここでも生きてきて、ページレイアウトなども難なく作れました。

楽天に出店した初月売上は、僅かに3万1千円。
それでも、注文が入った時は、感動しました。見知らぬお客さんが仮想店で私の商品を見て、「欲しい」、「いいね」と注文するという事に不思議さを感じるというよりは只々感動でした。

お客さんとパソコンの画面の中で直接繋がり、メールでやり取りする事にフリーマーケットでの対面販売と同じ感触を得ていたのです。それからはオンラインでの魅せ方や、販売出来る商品は何かを考え、どっぷりネット販売に嵌りこんで行きました。

その中で生まれた人気商品が木の折敷(ランチョンマット)です。スマップの料理対決番組やその他多数の人気料理番組でも毎週取り扱われていた事で、全国のお店からも取り扱いたいと申し込みが殺到し、漆器の木地づくりの傍ら、妻と二人で毎日、毎日、折敷を作り続け、そのおかげで飯が食えていました。

売れないかもという疑問を持ちながらもインターネットの販売に取り組んだ事で、これまでの狭い世界で空回りしていた自分が、無限に広がる宇宙のような世界観と可能性を感じることが出来るようになり、実践での自信と成果を得る事に繋がったのです。

木の折敷(ランチョンマット)

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