ガムシャラな表情、壁にぶつかった表情、 腕が上がったことに微笑む表情など。 Hacoaは、がんばる新人のいろんな顔が見られる場所でもあります。日々を一生懸命に積み重ねる彼らの横顔をフォーカス。
取材/株式会社真空ラボ
Hacoaダイレクトストア/平林 馨(アルバイト・大学4年生)
掲載日/2011年12月
2010年12月のオープンからアルバイトさせてもらっていました。私はHacoaフリークなので、Hacoaダイレクトストア(以下、HDS)で働けるようになった時は本当に嬉しかったですね。
思い返せば、最初にHacoaに出会ったのは一昨年のデザイナーズウィークでした。当時、ものつくり大学の2年生だった私は、大学としての出展に参加。
その時に、同じく出展していたHacoaのブースで「木製USBメモリ Chocolat」を見て、大きな衝撃を受けたのを覚えています。
決して奇抜ではないのに強いインパクトを残すデザインに、とても感動しました。 その時からHacoaのことが忘れられず、常にウェブサイトをチェックするようになり、さらに翌年のゴールデンウィークには両親を引き連れて本社のある福井県へ旅行に行きました。
緑溢れる田舎に、ポンと表れる洗練された社屋が印象的でしたね。休日だったため工房は稼働していませんでしたが、機械などを見せてもらいました。感激しまくりでしたよ。
はい。だからHDSで販売スタッフを募集についても、当然見逃しませんでした。ウェブサイトで確認すると、すぐさま応募のメールを送りましたよ。
ただ、実のところ、私は販売スタッフではなく作り手として応募したんです。Hacoaの商品づくりに関われたらどんなに楽しいだろうと思っていましたから。
でも、HDSの店長である岡山さんに言われたんです。「将来、作り手になりたいのなら、ユーザーの声が直接聞ける場所で働くことは、絶対ためになる」と。
私は、販売スタッフとしてHDSのオープンから働かせてもらうこととなりました。 最初は大変でしたね。接客については飲食店のアルバイト経験があったので抵抗はありませんでしたが、木の特性や商品、Hacoaの会社についての知識がまるでなかったので、お客様の質問に答えられないことが多かったんです。
これではいけないと思い、岡山さんたちに質問したりウェブサイトを見たりして必死で勉強しましたね。HDSには、それぞれのスタッフが気付いたことを書き込んで教え合う共有のノートがあって、それも知識を養うのに役立ちました。
特に記憶に残っている出来事が二つあります。ひとつは、あるお客様とのやりとりです。
そのお客様は、木製iPhoneケースの角が欠けて修理を申し込んで来られました。けっこう派手に破損していて、欠けた部分もすでに無かったので、元通りに戻すことはできないことがアルバイトの私でも一目見た瞬間にわかりました。できる限りのことはしてあげたいと思い、欠けた部分を丁寧に丁寧に磨いてあげました。
それをお客様に渡すと、「ありがとうございます!」と大喜びしてくれたんです。お尋ねしてはいないのでわかりませんが、何か思い出の詰まった大切な品だったのかもしれません。
ものに込められる「愛着」について、何かが、ほんの少しだけわかったような気がした出来事でした。
もうひとつの出来事は、東日本大震災の日のことです。あの日は東京で多くの人々が自宅に帰れなかったと聞きますが、私もその一人でした。店内で待機していると岡山さんが「名入れ」に必要となるソフトの使用法を詳しく教えてくれたんです。
当時、私は「名入れ」作業に必要なソフトが上手に使えず、私は名入れが苦手でしたから、本当に助かりました。そういう人間関係があることもHacoaのいいところだと気付き、私はひとつの思いをどんどん強くしていったように思います。
お盆明けから3週間にわたって参加させてもらいました。当初は、当然本社で工房の仕事をみっちり手伝わせてもらうことになるのだろうと予測していたのですが、市橋さんから「せっかくだからアートキャンプにも参加したら?今だから、学生の時にしか出来ないことをしたらどうだろうか」とのお計らいを頂いたんです。
お言葉に甘えて、昼はHacoaでのインターンシップ、夜は河和田アートキャンプにおいて、民家で合宿しながら活動しました。
河和田アートキャンプとは、2004年に発生した福井豪雨の災害復興支援に端を発した活動です。「芸術が社会に貢献できることは?」をテーマとしながら様々な創作活動が行われています。
私は、「蔵BAR」という民家の蔵を改装した居酒屋で営業の手伝いをさせてもらいました。何気なく生まれている地元のコミュニティがとても不思議でしたね。人が集まる場所を創ることで、いろんなことが始まる。
「ものづくり」に対する考えの幅が少し広がったように感じました。
いろんな作業を体験させていただきましたよ。ポットスタンド「Quoit」の作成では、サンドペーパーで加工する「磨き」を中心とした作業を手伝わせてもらったのですが、一見簡単なようで、これがなかなか難しいんです。
周囲の皆さんにアドバイスを受けながら作業しました。仕上げにつながる大事な工程だと思い、プレッシャーを感じましたね。
このほか、什器にLEDを取り付ける作業や、木製iPhoneケースをNCで加工する際の管理などをさせてもらいました。 実際の現場で仕事の流れを見ていて特に感動したのは、時間に対する厳しさを持つ一方で、品質への徹底した追求を欠かさない姿勢です。
決められた時間の中で仕事をてきぱきとこなしながらも、一定のレベルに達していない仕事は見逃さない。妥協は許さない。張り詰めた緊張感があるからこそ、凄い商品たちができあがってくるんだなと、あらためて感銘を受けましたよ。
本当に貴重な体験がたくさん得られたインターンシップだったと思います。 そして、インターンシップを終え、私はいよいよ市橋さんに就職したい想いを伝えたんです。
結果的に言えば、ダメでした。入社希望の考えを、直接、市橋さんに話したのは、インターンシップを終えた後の帰り道。
私は「話を聞いてほしいんです」と、ずっと言いたかったのにずっと言い出せなかった想いを切り出しました。「Hacoaで働き、Hacoaでしか学べない技術をしっかりと身に付けたいです。そして、いつかは木工作家になり、自分の工房を持つのが夢です」と。
市橋さんは一瞬だけ間をおいて話し始めました。「木工作家になりたいのならば、Hacoaは向いていないかもしれない。うちでは機械を使いこなすことが前提の仕事をしているから、それに慣れてしまうと、将来、一人でものづくりをする際に困るよ」と。
続けて、職人が持つべき考え方や技術を養うための環境についても教えてくれました。また、私が真面目過ぎるという話もしてくれました。「良い職人、高い技術を身に付けるには、少しズルくないと駄目なんだ。早く、上手く、楽をするにはどうすれば良いか?と考えることが、実は技術の向上に繋がる。直向きな真面目さでは駄目。
HDSがオープンした時からハコアを支えてくれた恩人のようなスタッフを受け入れても本当の厳しさは教えられない。ちゃんと学生を全うして、内定をもらった会社で世の中の厳しさを教えて貰いなさい。数年後に世の中を知って、厳しさを身に付けて大人になった時に、Hacoaでやりたいと思うのであれば相談にのるよ」と。
結果的に入社を断られたことはつらかったですが、私の遠い将来のことまで考えて答えてくれたことに大きなありがたみを感じました。 市橋さんと話をした後、しばらくの間、別の道を歩むことも考えました。
でもやっぱりHacoaは諦められないんですよね。そこで僕は、心に決めました。一度社会に出て勉強して、もう一度チャレンジすることを。いつかきっと、ここで職人になりたいです。
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