木製デザイン雑貨Hacoa もうひとつの手

Hacoaのスタッフたちには、自分の手に加え、もうひとつの手がある。それは道具たち。意のままに動かすことで、精巧な技術をしっかりと伝える。

取材/株式会社真空ラボ

6. 帯鋸(おびのこ)

大事な時に頼れる、親父

木製雑貨を作る道具、帯鋸(おびのこ)

鉄の輪に付いた、ギザギザの刃。

両端がつながった帯状のノコギリだ。

帯鋸には沢山のサイズがある。

両腕をつないだ小さなタイプから、背丈ほどの大きさ、家の屋根まで届きそうな巨大なものまで。

見た目はとても怖いが、実は頼もしい道具でもある。

サイズが上がるほど大きなパワーで、ガンガン切る。

ただ、精度を上げて切ることはできない。

曲線を描いて切ることもできない。

不器用な道具でありながらも、不可欠。

この鋸がなければ、丸太は割れない。

いないと困る、親父のような道具である。

木製雑貨を作る道具、帯鋸(おびのこ)

7. 糸鋸(いとのこ)

手を取り合い、行き先を読む

木製雑貨を作る道具、糸鋸(いとのこ)

細い身体が、せわしなく上下に動く。

その光景から通称「ミシン」と呼んでいる。

単純で安全かつ入門的な加工機械だが、奥は深い。

切り口という「今」だけではなく、一寸先の「未来」を見通しつつ作業しなければ、描いていた「計画」に向かって木材を推し進められない。

集中力を研ぎ澄まし、鋸の動きと呼吸を合わせる。

肩に力が入り過ぎては、思い通りにいかない。

鋸と一体になって、直線や真円を切ろうと努力する。

木材のクセを読み、クセに合わせて手を取り合う。

二人で一緒に人生を歩んでいくような加工機。

木製雑貨を作る道具、糸鋸(いとのこ)

8. プレーナー

新しい物語をつくる、新しい出会い

木製雑貨を作る道具、プレーナー

そなえているのは、超鋼の刃。

私たちが「手押し」と呼ぶ機械だ。

木のねじれをなくして板にする。

最初の工程をこなす。

一度に削れる厚みはたった0.2ミリ程度。

ねじれがなくなるまで、何度も何度も木材を押す。

木材との初対面。木目の美しさを改めて感じるひととき。

木の堅さや柔らかさを、削りながら、手で感じ取る。

すべての木材の癖が、頭にインプットされていく。

想像するのは、ともに歩む新しい物語。

いわば、木材とのお見合いの場なのである。

木製雑貨を作る道具、プレーナー

9. へら

伝統を自在に伝える木の板

木製雑貨を作る道具、へら

和菓子づくりにも使われるへら。

ハコアでも古くから重宝してきた。

接着剤となる漆剤を塗る道具。

混ぜたり、こねたり、薄く伸ばしたり、紐状にしたり。

糊を厚くするのも、薄く伸ばすのも角度次第。

へらとモノとの関係は面白い。

自在に扱うには、手に伝わるわずかな感触と手加減が鍵。

プラスチックのへらでは微妙な感覚が伝わらない。

単なる板だが、木の良さが活きる素晴らしい道具。

木製雑貨を作る道具、へら

もうひとつの手