ガムシャラな表情、壁にぶつかった表情、 腕が上がったことに微笑む表情など。 Hacoaは、がんばる新人のいろんな顔が見られる場所でもあります。日々を一生懸命に積み重ねる彼らの横顔をフォーカス。
取材・写真/株式会社真空ラボ
製造部/磯野 治基(2012年8月入社)
掲載日/2013年8月
実家が民宿なんです。高校卒業後2年間は、大阪の専門学校で調理を学び、その後の4年間は、お店で修行。それから実家の民宿に戻って8年間、板前として働きました。
転機となったのは、数年前、他県で別の仕事をしていた兄が帰ってきて板前になったことでした。
2年間ほど、一緒に厨房で腕を振るっていたでしょうか。でも、二人の板前がいても客足が増えるわけではありません。
ある時、「お店のことは兄に任せて、何か新しい仕事を始めるべきかなのかもしれない」と思ったんです。しかし、12年も続けてきた板前に代わる仕事なんて、簡単に見つかるはずがありません。
もやもやした日々が続いていました。そんな時、偶然、テレビでHacoaのことを取り上げた番組を目にしたんです。
長い年月に培われた伝統工芸を土台にした、現代ニーズに応えるものづくりの姿がそこにありました。テレビ画面に釘付けになり、「ここで働きたい」と熱い気持ちが込み上げてきたのを覚えています。
気持ちを落ち着かせながら、家族に自分の想いを伝えました。もし入社できたらHacoaで働きたいと話した時、兄は、「お前がやりたいことをすればいい」と目に涙を溢れさせながら私に言いました。
全てをさらけ出して兄と話し合ったのは、あれが初めてだったかもしれません。続けて、両親も、妻も認めてくれました。本当に有り難いと思います。
その後、履歴書を送る前に、一度、Hacoaに足を運びました。のどかな田園の真ん中に建ったモダンな社屋は、まるで仕事内容を象徴しているようで惚れ直しました。
休日だったので現場は見られませんでしたが、Hacoaダイレクトストアで商品を手に取ってみて、あらためて精巧なものづくりに感心しました。「やっぱりここで働きたい!」と自分の気持ちを再確認しましたね。
市橋社長からは「本気で辞めるの?」「考え直すべきだ」と何度も言われました(笑)。職人として歩んだ道のりに、重みを感じてくれたのだと思います。
なぜなら、私は木工の世界での経験はゼロなのにも関わらず、それについては全く問題にされませんでしたから。あきらめずに自分の強い気持ちを伝えたら、入社を認めてくれました。
後で人づてに聞いた話では、「職人としての心構えがあって、職人としての段取りの付け方を知っていれば、技術はすぐ身に付く」というのが市橋社長の考えとのこと。
ただ、やっぱり初心者には違いありません。最初に与えられたポスターフレームの仕事で、いきなり壁にぶつかりました。
例えば、四方の角を作るのに、自分では同じようにやっているつもりでも、毎回異なるものが仕上がってしまう。いくつ作っても全て同じ商品を仕上げる木工職人の技術に驚きました。
入社して3ヶ月間は、何をやっても楽しい期間でした。でも、次第に慣れてきてからは、自分の実力の無さを思い知らされる日々でした。自分が本当に必要とされる存在となれるのか、とても不安になりました。
そこで思い出したのが、市橋社長の「自分の武器を見つけろ」という言葉でした。武器というのは、自分がいて初めて生み出せるもの。居場所となり、信頼を育む源ともなるもの。「何かを創らなければ」と頭を捻って、思いついたのがこの木製印鑑ケースです。
お恥ずかしいのですが、実は3月くらいに完成していたんです。自信がなくて黙っていました。だからこそ採用してもらえた時は嬉しかったですね。
それ以上に嬉しかったのは、第一号が売れた時。Hacoaダイレクトストアから連絡をもらったのですが、胸の高鳴りが止まりませんでした。
自分の特技は、続けること。コツコツとやっていきたいです。常にいろんなことに耳を傾けて、学びながら成長していかなければと思います。
優れた職人がこんな身近で仕事していて、何でも聞ける環境はあまりないですから。私はあまり意識したことはないのですが、市橋社長の言う「職人の心構え」がもし存在するならば、それはきっと、私が12年間に培った宝です。
築いた輝きをより輝かせられるように磨き続けていきたいと思います。その上で、いつか、Hacoaの技術の基盤である伝統的なものづくり手法を身に付けられたら幸せです。
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