ガムシャラな表情、壁にぶつかった表情、 腕が上がったことに微笑む表情など。 Hacoaは、がんばる新人のいろんな顔が見られる場所でもあります。日々を一生懸命に積み重ねる彼らの横顔をフォーカス。
取材/株式会社真空ラボ
製造部/藤井 達也(2011年4月入社)
掲載日/2011年11月
和歌山の某大学で建築学科を専攻していました。木工との出逢いは、在学中に授業の一環で友人と一緒に建てたひとつの小屋です。大工さんにいろんな加工法を教えてもらいながら自ら作業を進めたところ、これがとても面白かった。
それまで、建築学科に通う学生として将来は建物の設計・デザインに携わることを何気なく想定していました。でも、それよりも自分の手を動かしてものを作りたい、そしてできれば家具をつくりたいと思ってしまったんです。それが最初の木工との出逢いでしたね。
いや、まだです(笑)。大学3年次になって周りの友だちが就活をはじめた頃、僕は悩んでいました。このまま建築・設計の仕事に就くことが自分の理想ではないけれど、木工を仕事として考えるまでには至っていなかったんです。
いくら考えても結論は出せず最終的に1年間休学し、唐突かもしれませんがイギリスの大学へ語学留学する道を選択しました。
でも、これが僕にとってはっきりとした結果に結び付くことになったんです。留学した大学の近くにアート系の学校があり、そこの学生たちと交流する機会が頻繁にありました。彼らと話していると、常に強い「自主性」が伝わってくるんです。
皆それぞれに自分の意志で人生を歩いている。そんな人たちに囲まれた日々を過ごす中で、「木工を仕事にする」という僕の決意は固まっていきました。
友人がHacoaのデザイナーと知り合いだったんです。イギリスから帰国して木工の会社を探していた時に、それを知った友人が紹介してくれました。
Hacoaのデザイナーの実家がある和歌山にちょうど帰って来ていて、いろいろ話をしてくれました。会社のことや作っている商品のことなど、この時が初めてHacoaについて詳しく知った瞬間でしたね。
参考になり、とてもありがたかったのですが、僕の中には「家具づくり」への憧れがあり、木製雑貨づくりへの違和感がありました。しばらくして僕は、家具の製造について学ぶために大学卒業後の1年間、長野にある家具づくりの学校へ通うことになります。
でも、その学校に通っているあいだ、いろいろ考えたんです。僕は木で何かをつくる仕事に就きたくて、技術を身に付けたい。
では、何を作るかはそんなに問題ではないんじゃないかって。そして、僕は学校を卒業した後、Hacoaに履歴書を送りました。
いいえ。Hacoaから届いたのは、2週間にわたって工房を体験できるインターンシップの案内でした。でも、とても嬉しかったです。実家が福井市内にある僕は、迷うことなく喜んで参加させてもらいましたね。インターンシップ中は、「Hacoaダイレクトストアのディスプレー用棚板の製作」と「駅のベンチの組立」に携わることができました。
でも、僕は、ここで自分の甘さに気付かされることになります。それなりに技術を学んできた僕としては、学校での作業も仕事における作業も変わらないと思っていたのですが、決められた時間内に必要な数を量産することは思った以上に大変でした。
「しめ切り」と「数」という、職人の仕事には当然ともいえる責任に、学生の頃には体験したことのなかった重みを感じたのを覚えています。そうして仕事の基本を学んだ僕は、しばらくしてHacoaから採用の案内をもらうことになるんです。
最初の仕事は「天然木の削りだし箸箱」でした。しかも、いきなり製造工程のチーフを任されたんです。もう、物凄いプレッシャーでしたね。
製造工程、素材の加工法、段取り、機械の使い方、その何もかもがわからない状態で頭が真っ白になりました。とにかく勉強しなければと思い、工程や機械の使い方を先輩に聞いて学び始めたんです。
しかし、この勉強に10日間もかけてしまい、代表の市橋に叱られました。「そんなことに10日間もかけて、どうするんだ?!失敗してもいいからとにかく作ってみろ。わからないことは現場で学ぶんだ!」。
この時の言葉は今でも胸に強く残っています。ものづくりには、ものづくりの現場でしか学べないことがたくさんあるんですよね。あの時の言葉の意味が、今はほんの少しわかってきた気がしています。
毎日楽しいです!半年間のあいだにHacoaの持つほぼ全ての商品製造を任せてもらいましたが、日々、新しいことを覚えることができ、新鮮な体験ばかりで飽きることがありません。チーフをさせてもらうことで、商品のことだけでなく、人の動かし方などを学べるのも楽しいですね。
今、僕はとても恵まれた環境で働かせてもらっていると感じています。先輩もみんな優しいですし、設備なども充実しています。また、漆器の伝統産業が息づくこの地で働けたことは実はとても貴重だと思うんです。他の場所では得られないものづくりの考え方をきっと得ることができると予感しています。
今後の目標としてはもっともっと技術力を磨いていきたいですね。いつか自分でデザインしたものを自分で製造することが夢です。
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